「愛と法」上映会と南和行弁護士講演会の感想
所属している*1という団体の総会記念講演で、「愛と法」を観て、南和行先生のご講演を聞いてきました。
南先生も吉田先生も大阪市大ローの先輩で勝手に親近感が湧いていたのもあり
気になる裁判の内容が載っていたり
観たいと思っていました。
しかし京都の上映はあっという間に終わり、行けずじまいやったので
今回観られるのをとても楽しみにしていました。
わーい!
今日の感想が色々ありますので、忘れないうちに色々書いておこうと思います。
今日の感想①スティグマと差別と愛
愛と法は、世の中に受け入れられていないマイノリティの裁判の話題が多いのに「悲痛な叫び」感がなくて穏やかな映画でした。
人権問題ってどうしても、共感性があるほど痛ましく感じてしまうものが多くて、
私自身覚悟しないと覗くことすらできないものもあります。
差別解消のための手段としてスティグマを強調するべきだ/してはいけない論争あると思うのですが、
この映画はスティグマを強調しないんだけど自分ごととして捉えられる不思議な映画だなーと感じました。
差別を受けている人のインタビューであっても、その人の家族との繋がりを示したり、弁護士夫夫の穏やかな家庭内やりとりがあったり。
ずっと「何で愛と法というタイトルなんだろう?」と思っていましたが、穏やかな愛が溢れている映画だったと見終わってから納得しました。
今日の感想②家族っていいなあ
吉田先生が未成年後見人をしていたカズマという少年を一時預かって一緒に生活するというシーンがありました。
3人でリビングにいて、12時をすぎた後、先生方がカズマくんに「僕らは仕事あるからもうちょっと起きてるけどもうねーや」というシーンや
3人で南先生のMVを見ながら笑っているシーン
吉田先生がサポートして、カズマくんが作ったご飯を3人で食べているシーンを見て
「素敵な家庭やなあ」と思いました。
何歳かはわかりませんが、児童養護施設で長く育ったカズマくんがお二人の家庭を離れた後、女性と暮らしているシーンで
「自分が見た人の中で一番幸せそうなのは、弁護士の先生たち」「自分の夢は結婚して幸せな家庭を作ること」と語るところがあるのですが
お二人との共同生活が幸せだったんだろうなーとホコホコしました。
私は、弁護士である夫と、入籍はしない事実婚を選択しているので
「家族って何だろう」と考えることが多いです。
私にとっては、家族とは「巣にいるメンバー」で
難しそうに言えば「家庭内再生産を共に行う共同体の構成員」といえるかもしれません。
羽を休める場所が欲しくて、私は家族がほしいと思っていたのですが
吉田先生と南先生の家庭は、私が理想とする家族の一つだと感じました。
今日の感想③弁護士の仕事って自由やなあ
ろくでなし子さんの裁判の話や君が代不起立訴訟の話の中で
「空気を読めと言われる」「空気が読めないやつと言われる」という話が出てきました。
私は、読むべき空気はわかるけれど周りの同調圧力の強制で自分の行動を変えなければならないというのが堪え難いので、結果的に空気を読めません。
私は、まだまだ弁護士になって半年程度で
わー困ったなあどうしようと思うこと、こんなんどうするねんと思うこと山ほどありますが
その一方で、きっと弁護士以外になっていたら精神を病んでいたと思うことがあります。
弁護士は空気を読まなくてはならない場面がとても少ないです。
自分の考えを表明することが必要な仕事です。
不合理だと思ったら、なされるべきことがされていないと思ったら瞬発的にそれを主張する必要があります。
空気を読まないことが評価されることもあります。
私は幸いにして、今までの人生で、思ったとおりやったときに味方がいなくなるという経験は(確か)なかったと思うのですが
愛と法に出てきた人たちは、職場や、警察署で孤立させられて、「空気読め」と言われているのだろうと思うと、はがゆくなります。
そういう方達の支援者も映しているから、穏やかなドキュメンタリーになっているのかもしれませんが、しょうもない同調圧力にいじめられている人がいると思うとそんな社会*****と思います。
弁護士は自由だなあと思う反面、ろくでなし子さんみたいなアーティストまで空気読ませられるなんて本当おかしな社会だと思います。
私はずっと司法試験の受験科目としての憲法が嫌いだったのですが
人間にはバカなことする権利がある、それが自由だ、みたいなことを聞いたと思うのです。
そこから、憲法が好きになりました。
私はバカなことやったっていいんだから、というか空気を読めという圧力には、思い通りにならないということをもって200%対抗していきたい!
今日の感想④親近感?
南先生と吉田先生は、日本で初めて里親認定を受けた同性カップルということで数年前にニュースになりました。
そのときに、確か「男性より女性の方が一般的に収入が多く、裕福なゲイカップルが、何らかの理由で親が育てられなくなった子供の里親になるのは社会経済的にも良い」みたいな話を見た気がします(気のせいだったら本当にすみません)
私と夫は、自分たちの子供をほしいと思っていますが、
里親にもなりたいと漫然とですが思っています。
それは、自分たちの主義信条の関係もありますが
私には先のニュースを見て無意識にか影響された面がある気がします
(愛と法でその話題が出てきて 思い出しました)
この話は親近感の根拠がわかったということだったのですが
今日は、新たに吉田先生と南先生のカップルと自分たちとの共通点を感じました。
南先生が講演で
「二人が披露宴をして、家族にも受け入れてもらえて…ってしているのは
お互いが弁護士で周りに文句を言わせないようなパワーがあるからだ、
恵まれているということを言われることがある。
僕もそういう面はあると思う。」
とというようなことをおっしゃっていました。
その話を聞いていて思い出したのが自分と夫とのことです。
私と夫が事実婚を選択できた理由は色々ありますが
私も夫も弁護士で、
反対する身内に対しても法律や判例の根拠をもって説得できるだけの
知識と性格があるということがあります。
姓を変えたくないと双方が思っているカップルであっても、
事実婚をするといって、周囲の理解が得るのはまだ簡単じゃないかもしれません。
わざわざ周りを説得しなくても、説得できない人たちでも
同性でも別々の姓でも結婚できる、周りから祝福される、そんな社会になればいいのにと思いました。
今日の感想⑤自分たちの戸籍上の性別って何
以前ツイッターにも書いたことがあるのですが、
弁護士登録をする際に、性別記入欄がありました。
男か女かに丸するんだったか、一文字書くのか忘れましたが
書類作成時「これトランスジェンダーの人はどうするんだろう?」と思い
手をとめ「まあいいやあとで書こう」と思ったまま忘れ提出した私は
1ヶ月後に、日弁連から性別確認の電話を受けました。
性別の記入いるん?
いるとしたら性自認と戸籍どっちで書かせるの?
そもそも2種類に分けようというのが無理な話で
かといって何十種類もある性別で書こうと思ったら大変すぎるし
そもそもそれを書きたくない人もいるだろうし
自分で性自認を明らかにしないと決めている人もいるだろうし
と思っていたら書き忘れたわけですが
今日、某スポーツクラブの訴訟の話で思い出しました。
スポーツクラブを利用していた性自認が女性で性器除去手術も受けた方が、
戸籍上の性別が男性であるということを理由に、
更衣室は男性のものを使わなければ退会させるという念書を書くよう求められた
という話だったのですが
いやある程度戸籍上の性別を使うことも便宜上必要なことだと思うけど
そんなアホらしいことあるかと思いました。
そして、性別の記入を日弁連が求めていたことを思い出しました。
(なぜか単位会でのチェックでは何も言われませんでした。事務所住所の記載ミスは指摘されましたが…)
あれ、いるんかなあ?
マイノリティーである女性弁護士の数を把握するという意味では合理性あると思うけど、書きたくない人、書けないと考えている人はどうするんだろう。
考え出したら止まらないことだらけの感想がほとばしっているのですが
だからこそ良いドキュメンタリー映画を見たなあと余韻に浸ります。
*1:JCLU